不協和音の解決
明日は大晦日、あさっては新年・・・時の流れは速いですね。
今年の締めくくりに、イタリアのフレスコバルディ(1583-1643)が作りました、「不協和音のカプリッチョ」”Capriccio di durezze” をご紹介します。
「カプリッチョ」というのは、「奇想曲」と訳されて気まぐれな自由な作品に付けられることが多い名称ですが、イタリア・バロックのカプリッチョはそれとは違い、対位法の技法を駆使した、むしろ厳格な作品のタイトルに用いられました。
ただし、当時の対位法作品には、何回も拍子やテンポが変わる作品も多かったので、気まぐれな感じが皆無というわけではありません。
フレスコバルディは12曲からなる「カプリッチョ集」を出版しましたが、「不協和音のカプリッチョ」はその中でも最も和声的な美しさを味わうことのできる曲です。
その名の通り不協和音や掛留を多用し、音がぶつかっては解決して行くさまがえもいわれぬ美しさを生み出しています。
それでいて、複数のモチーフが高度な対位法技法で扱われる、まさに天才の作品といった趣を持っています。
昨年から続くコロナ・パンデミックは、社会に大きな「不協和音」を生み出しました。
「自粛警察」などという言葉ができて、他人の行動を監視して非難するようなことがありました。
また、「密を避けましょう」という掛け声のもとに人と人とのつながりが制限され、「不協和音」どころか共に生きるという「ハーモニー」すら失われていたようにも思えます。
この作品のように不協和音が解決して、社会に美しいハーモニーがあふれるようになることを願ってやみません。
「兄弟(人々)が共に住むことは/何という幸せ、何という麗しさ。」(詩編133編1節)