神の小羊、父の御子
前回に引き続き「栄光の賛歌」(作曲者不詳;18世紀イタリア)です。
グレゴリオ聖歌をミサで歌う際に、奇数の節は聖歌そのものを歌い、偶数の節はオルガンの小曲を演奏するという「アルテルナティム」という方法が16~17世紀を中心に行われてきましたが、そのために作られた作品です。
今回は「栄光の賛歌」の5曲目、本来「神なる主、神の小羊、父の御子よ」という歌詞が歌われる部分を、オルガンで置き換えたものです。
父なる神の独り子であるイエス・キリストが、私たちの住むこの世界に来られた、それが降誕。
そのことを覚えてお祝いするのがクリスマスです。
キリストがこの世界に来られたのは、私たちの赦しのために、ご自分がいけにえの小羊となられるためであった、と聖書は語ります。
「神なる主、神の小羊、父の御子よ」という短い言葉の中には、そのような大きな重い意味が含まれているのです。
「その翌日、ヨハネは、自分の方へイエスが来られるのを見て言った。『見よ、世の罪を取り除く神の小羊だ。』」(ヨハネによる福音書1章29節)
この作品は、軽快なメロディを高い音域と中位の音域とで繰り返す、エコーのスタイルで書かれています。
単なる繰り返しではなく、変化をつけることによって単調にならないようにする効果があります。
ひょっとしたら作曲者には、「父なる神」と「御子キリスト」をエコーで表す、という意図があったのかもしれません。